離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「ということですが、いかがいたしますか? 旦那様」
「受け入れられない」

 フィリクスはひとこと返す。
 するとセインは冷静に遠慮なく訊ねた。

「奥様と離婚されない理由は……?」
「いちいち訊くな。離婚する理由がないからに決まっているだろう」

 セインは表情を崩さず、真顔で続ける。

「ちなみに、奥様は先日食事が取りやめになった件を誤解されているようです。離婚申請はそれが理由ではないかと」

 フィリクスが眉をひそめると、セインは続けた。

「旦那様がお出かけになるところをご覧になったようですが、どうやら愛人がいらっしゃると思われているようで」
「バカげたことだ」

 とはいえ、離婚申請は無視できない。
 放置しておけば1年後には成立し、強制的に夫婦関係を解消させられてしまう。

 セインはそれ以上何も言わずに一礼すると執務室を出ていった。
 フィリクスはくしゃっと手紙を握り潰した。

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