離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアに付き添って大聖堂まで訪れたエレナは、伯爵家の使用人たちに行く手を塞がれた。

「この先は関係者以外、立ち入りを禁じられております」
「私はアリシア様の侍女ですわ」
「あなたの役目はここで終わりです。あとは伯爵家の仕事ですから」
「そんなっ……!」

 不安げな顔で戸惑うエレナに、アリシアが静かに言った。

「私は大丈夫よ。待ってて、エレナ」
「アリシア様……」

 前方でグレゴリーが待機している。
 アリシアは伯爵家の者に連れられてゆっくりと歩いていく。
 それを、エレナは複雑な心境で見送った。

(アリシア様、どうかお心を強くお持ちくださいませ)

 エレナはそっと両手を組み、祈るように目を閉じる。
 それを避けるように、招待された貴族たちが次々と大聖堂へ向かっていく。
 しばらくエレナがそこで立ち尽くしていると、背後からとんっと肩を叩かれた。

「はい、何か……?」

 エレナが振り返ると、そこには背の高い人物が立っていた。
 長いマントに旅人風の帽子を被り、仮面をつけた異様な雰囲気を漂わせる者だった。
 しかし、まったく目立ってはいない。
 なぜなら、招待客たちはみな、仮面をつけた異様な人たちばかりだったから。

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