離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアは静かに大聖堂の扉をくぐった。
 荘厳なステンドグラスから差し込む朝の光がまぶしく、アリシアにとっては美しくも残酷だった。
 堂内には多くの貴族たちが並んでいた。
 この結婚式は急遽決まったことなのに、まるで長く準備されてきた舞台のようだ。

(一体どこからこれだけの人数を集めたの? ほんの数日しかなかったはずなのに……)

 アリシアはざわめく会場を見わたしながら、胸の奥に小さな疑念を抱く。
 それ以上に違和感があったのは、参列者たちがみな仮面で顔を隠していることだった。
 白や金、黒といった華美な装飾を施された仮面の数々は、本来なら舞踏会を思わせる華やかさがあるはずなのに、この場ではまるで何かを隠すための道具のように思える。
 この異様な光景に、アリシアは背筋がぞくりとした。

 となりに立つグレゴリーがアリシアの腕を取り、引き寄せるようにして歩き出す。
 アリシアの心情など構うことなく、まるで主役は自分だと言わんばかりに胸を張り、堂々とした物腰だ。

(これは何の茶番かしら……)

 アリシアは重い足を引きずるようにして、グレゴリーに連れられた。

< 171 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop