離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスは照れくさそうに頬を赤らめ、少し目を泳がせてから、再びアリシアに視線を向けた。
 そして、少し困惑した表情でゆっくりと口を開く。

「……先に、言われてしまったな。戻ってきたら、俺が一番に伝えるつもりだったのに」
「えっ……?」

 今度はアリシアが目を丸くする番だ。
 フィリクスはアリシアの顔をじっと見つめ、穏やかな口調で告げる。

「君のことを愛している。俺が離婚したくないのは、そのためだ。君と一生、添い遂げたいからだ」
「旦那様……」
「本当は、もっといい場所で伝えたかった。こんな満身創痍の姿ではなく、きちんと贈り物も用意して……」
「何もいりません。旦那様がそばにいてくだされば、それだけで……私は十分です」

 アリシアは再び両腕を広げてフィリクスに抱きついた。
 フィリクスもまた、彼女を強く抱きしめる。
 少しのあいだ抱擁し、またお互いに顔を見合わせると、自然と笑顔を交わした。
 フィリクスはアリシアの顔をじっと見つめる。その表情は穏やかだが、少し残念そうにも見える。

「アリシア、とても綺麗だ。できれば、俺との結婚式でこの姿を見たかった」
「旦那様が望むなら、私はいつでも花嫁になります」

 アリシアが微笑んでそう言うと、フィリクスは「ああ」と穏やかに答えた。

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