離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 軽食をとって薬を飲んだあと、アリシアはエレナに支えられてフィリクスの部屋を訪れた。

「だから俺はもう平気だと言っているだろう」

 扉が開いた瞬間、フィリクスの声が飛んできて、アリシアはほっと安堵のため息をこぼした。
 しかし、すぐにセインの呆れた声も続いて聞こえた。

「何度も言いますが、あなたは死にかけていたんですよ。いい加減にしてください」
「だが、何かしていないと気が済まな……っ!」

 ベッドの上で上半身を起こしていたフィリクスは、急に激痛を感じたのか、横になって呻いた。

「人の忠告を聞かないからです」

 セインはまったく心配するそぶりを見せず、淡々と冷たく告げた。
 アリシアが入室すると、横になっていたフィリクスは驚いて跳ね起きようとした。その反動で再び激痛に苛まれる。

「本当に学ばないお方だ」

 セインが呆れ声を出す。
 だが、フィリクスはもうアリシアしか目に入っていなかった。

「アリシア、具合はいいのか?」
「はい。旦那様はお怪我がまだ酷いのですね」
「心配ない。骨にヒビが入っていただけだ」
「ええっ!? そんなっ……」

 思わぬ事実にアリシアは血相を変えた。

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