離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアにじっと寝ているように言われたフィリクスは、本当に大人しく療養し、ゆっくりと回復を待つ日々を送った。
 そんな彼をアリシアは一日中付き添い、優しく看病していた。
 使用人たちは、アリシアもまだ体調が回復していないのに大丈夫だろうかと心配そうに話す。
 そんな様子を見て、エレナは微笑みながら言った。

「なるべくおふたりの時間を大切にして差し上げましょう。何かお困りごとがあればお手伝いすればいいわ」

 食事の時間も、アリシアはフィリクスに食べさせることを惜しまなかった。
 初めは照れくさそうにしながらも、フィリクスはどこか満たされた表情でそれを受け入れている。

 ふたりは穏やかな時間の中で、さまざまな話を交わした。
 フィリクスが傷の痛みに顔を歪めると、アリシアはそっと背中を撫でる。
 するとフィリクスは、腕を伸ばしてアリシアを抱き寄せた。

「傷に触れますよ」
「少しくらい、いいだろう。妻を堪能したい」
「もうっ! 旦那様ったら」

 アリシアは頬を真っ赤に染め、胸の内で呟いた。

(こんなに甘い言葉を口にする人だったかしら?)

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