離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスがなかなか放してくれないので、アリシアはテーブルに置かれたお茶を見て、声をかけた。

「旦那様、お茶が冷めてしまいますよ。痛みに効くハーブティーです。飲みますか?」
「ああ。飲ませてくれるか」
「……はい」

 アリシアは少し冷めたカップを手に持ち、そっとフィリクスの口もとへ持っていく。
 しかし、フィリクスはそれを飲む仕草をせず、じっとアリシアを見つめたままだ。

「あの、旦那様……?」

 意味がわからず、アリシアが首を傾げると、フィリクスは真剣な表情で言った。

「君が直接、飲ませてくれるのではないのか?」
「……はい?」

 アリシアは驚き、目を大きく見開いた。
 そして、すぐにその意味を理解し、猛烈に赤面した。

「だ、旦那様……おふざけは」
「ふざけてなどいない。本気でお願いしている」
「ええっ!?」

 アリシアは顔を真っ赤にし、狼狽えながらもカップを持つ手が震えていた。

「どうした? お茶が冷めてしまうだろう」
「だって……そんな……」
「早く飲ませてくれ。喉が渇いた」

 淡々と告げるフィリクスに焦りながら、アリシアは声を上げた。

「もうっ!  わかりましたよ!」

 震える手でお茶を口に含み、ゆっくりとフィリクスに顔を近づけた。

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