離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 アリシアは胸の鼓動が破裂しそうなほどバクバクしている。
 羞恥のあまりフィリクスの顔をまともに見れず、目を伏せたまま口づけようとした。
 すると、フィリクスはアリシアの肩に手をまわし、自ら動いて受け入れようとしたが――。

 その瞬間、部屋の扉がノックされ、がちゃりと音を立てて開いた。

 セインが入室すると、アリシアはとっさにフィリクスから身を引いた。
 しかし勢い余って紅茶が喉に引っかかり、盛大にむせてしまう。

「けほっ、けほっ……!」

 咳き込むアリシアを見て、セインが眉をひそめる。

「大丈夫ですか?」
「え、ええっ……大丈夫……」

 セインは視線をフィリクスへと移す。
 フィリクスは頬を赤らめ、冷や汗を額に滲ませながら、目をそらしている。

 しばしの沈黙のあと、セインは半眼になってふたりを交互に見つめ、やがて淡々と口を開いた。

「いちゃつくのは完治してからにしてください」
「そんなことはしていない!」

 フィリクスが真っ赤になって慌てて叫ぶ。
 セインは肩をすくめ、ため息まじりに言う。

「まあ、いいですよ。ご夫婦ですし、ご自由に。ただし、怪我が悪化するような行為は、ほどほどに」
「だから、していないと言っているだろ!」

 むきになって声を上げるフィリクスのそばで、アリシアは顔を真っ赤にして俯いていた。

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