離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「あとは、そうだな……」
長が視線を遠くへ向ける。
その先を追うと、アリシアが老婆と並んで座り、小さな布に刺繍を施している光景があった。
穏やかに微笑みながら、糸を通す指先の動きを教えるアリシア。
老婆も目を輝かせながら、夢中で話をしている。
アリシアが贈り物として持ってきた刺繍は、老婆にとって初めて見るものだった。村ではあまり娯楽がなく、日々生活のことだけ考えて生きている。
裁縫といえば、衣類を繕う手段でしかない。
色とりどりの花や鳥の絵を糸でハンカチに描き、レースや透明な石で飾って輝かせるようなことは、老婆に馴染みがなかったようだ。
彼女が自分もやってみたいと申し出たので、アリシアはやり方を教えているところだった。
「これからも、時折相手をしてやってもらえないだろうか。たまにでいい。あんな楽しそうな目をした妻は初めてでね」
そう言って嬉しそうに微笑む長の様子は、まるで自分のことのようにフィリクスには思えた。
彼にとっても、アリシアが喜ぶ姿を見るのはたまらなく嬉しい。
「ああ、そうだな。そのときは、酒を持ってまた訪れよう」
フィリクスは自分もここへ来ることの口実を作り、深く頷いた。
長が視線を遠くへ向ける。
その先を追うと、アリシアが老婆と並んで座り、小さな布に刺繍を施している光景があった。
穏やかに微笑みながら、糸を通す指先の動きを教えるアリシア。
老婆も目を輝かせながら、夢中で話をしている。
アリシアが贈り物として持ってきた刺繍は、老婆にとって初めて見るものだった。村ではあまり娯楽がなく、日々生活のことだけ考えて生きている。
裁縫といえば、衣類を繕う手段でしかない。
色とりどりの花や鳥の絵を糸でハンカチに描き、レースや透明な石で飾って輝かせるようなことは、老婆に馴染みがなかったようだ。
彼女が自分もやってみたいと申し出たので、アリシアはやり方を教えているところだった。
「これからも、時折相手をしてやってもらえないだろうか。たまにでいい。あんな楽しそうな目をした妻は初めてでね」
そう言って嬉しそうに微笑む長の様子は、まるで自分のことのようにフィリクスには思えた。
彼にとっても、アリシアが喜ぶ姿を見るのはたまらなく嬉しい。
「ああ、そうだな。そのときは、酒を持ってまた訪れよう」
フィリクスは自分もここへ来ることの口実を作り、深く頷いた。