離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
フォークでひと口食べると、すぐにその美味さがわかった。
シナモンシュガーの効いたキャラメルソースに砕いたナッツの香ばしさとやわらかく煮詰めたりんごの触感。さらに、さくっと焼き上げられた生地が絶妙に重なり合い、たまらない美味さが口いっぱいに広がった。
フィリクスはフォークを皿に置くと、口もとにそっと手を添えた。そのまま顔を覆うようにして俯く。
「どうだい? 涙が出るほど美味いだろう?」
「……ああ」
泣いてはいないが、今の自分の顔を誰にも見られたくなかった。
メルアはにやりと笑い、冗談めいた口調で訊ねる。
「あんたも、あの子のファンになったのかい?」
フィリクスは俯いたまま、ぽつりと答える。
「そのようだ」
「あはは、そうかい。ちょっと待ってて。呼んでくるから」
「待て」
フィリクスは慌ててメルアを制止した。
「いい。俺はもう帰る。彼女によろしく伝えてくれ」
そう言うと、テーブルに余分の金を置いて立ち上がる。
「兄ちゃん、ちょっと多すぎるよ」
「受け取ってくれ。彼女の分だ」
「それじゃ、ありがたく頂戴するよ」
フィリクスは他の客に顔を見られないよう帽子を深く被り直すと、そそくさと店をあとにした。
シナモンシュガーの効いたキャラメルソースに砕いたナッツの香ばしさとやわらかく煮詰めたりんごの触感。さらに、さくっと焼き上げられた生地が絶妙に重なり合い、たまらない美味さが口いっぱいに広がった。
フィリクスはフォークを皿に置くと、口もとにそっと手を添えた。そのまま顔を覆うようにして俯く。
「どうだい? 涙が出るほど美味いだろう?」
「……ああ」
泣いてはいないが、今の自分の顔を誰にも見られたくなかった。
メルアはにやりと笑い、冗談めいた口調で訊ねる。
「あんたも、あの子のファンになったのかい?」
フィリクスは俯いたまま、ぽつりと答える。
「そのようだ」
「あはは、そうかい。ちょっと待ってて。呼んでくるから」
「待て」
フィリクスは慌ててメルアを制止した。
「いい。俺はもう帰る。彼女によろしく伝えてくれ」
そう言うと、テーブルに余分の金を置いて立ち上がる。
「兄ちゃん、ちょっと多すぎるよ」
「受け取ってくれ。彼女の分だ」
「それじゃ、ありがたく頂戴するよ」
フィリクスは他の客に顔を見られないよう帽子を深く被り直すと、そそくさと店をあとにした。