離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 そして叔父の来訪の日がやって来た。
 フィリクスとアリシアはふたり揃って彼を出迎えた。
 邸宅内を案内された叔父のグレゴリーは壁にかけられたタペストリーをじっくり眺めたり、彫刻品を品定めしたり、あげくにはカーテンや絨毯まで舐めるように見つめた。
 それを見ていたアリシアは複雑な心境だった。

(きっと叔父様は旦那様にお金をせびるつもりだわ。どうしよう)

 不安げな顔をするアリシアをよそに、フィリクスは冷静にグレゴリーと話をしている。
 ひと通り案内し終わったあと、ダイニングルームで食事をすることになった。その際にもグレゴリーはテーブルや椅子など家具の質感を手で触ったり、当然食器も品定めした。

 料理が次々と運ばれてくる。
 ビーフステーキやひき肉とトリュフのテリーヌ、異国から取り寄せた数種類のチーズと領地の畑で採れた野菜のサラダ、アリシアが焼いたパンなど。
 アリシアが侯爵家の品位のために料理長と一緒に考えたメニューだった。

 ワインに酔ってご機嫌になったグレゴリーはフィリクスに遠慮なく本心を丸出しにした。

「いやあ、侯爵閣下は出世しましたなあ。ずいぶんと羽振りのいい生活をしておられて羨ましいですよ。少しばかり妻の親戚に恩恵があってもいいものですがね」

 それを聞いたアリシアは羞恥でいっぱいになり、フィリクスの顔をまともに見ることができなくなった。

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