離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「もちろん、あなたには世話になりましたからね」

 フィリクスは動じることなく、すらすらと返す。
 すると顔を赤く染めたグレゴリーは上機嫌な声を上げた。

「いや、これは失礼。何も私は閣下に金銭を要求するつもりなど毛頭ありませんよ。可愛い姪っ子の旦那だ。これからも懇意にさせてもらいたいものですな」

 フィリクスはそれに対して何も言わず、黙ってグラスを傾ける。
 アリシアはナイフとフォークで肉をカットしたが、それを口にする気になれずにいた。
 グレゴリーはますます高揚した様子でフィリクスに話しかける。

「やはり遠征では相当な戦功を上げられたのですなあ」
「仕事をしただけですよ」
「またまたご謙遜を。閣下はやはり内政より戦場がお似合いですよ。領地管理など地味でつまらないでしょう?」
「そんなことはありませんよ。多忙のあまり妻と食事もまともに取れないくらいでね」
「ほう、それほど公務に追われているとは」
「ええ。特に最近では夜盗事件に悩まされているんですよ。おかげで妻との晩餐を急遽キャンセルせざるを得なかったくらいです」

 それを聞いたアリシアは驚いてフィリクスを見つめた。
 グレゴリーは一瞬表情を引きつらせたが、すぐに笑みを浮かべた。

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