離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
「料理のメニューを考案したのは妻です。この日の準備もすべて彼女がおこないました」

 唐突にフィリクスがそう言って、アリシアは目を見開いた。
 グレゴリーも驚いたようだが、すぐに満足げに笑った。

「そうでしたか。姪っ子はお役に立てているようで……」
「ええ。とても有能な妻です」

 アリシアもグレゴリーも目を見開いたまま息を呑んだ。
 社交界でも無口で人を褒めることをしないと有名なフィリクスだ。グレゴリーさえ呆気にとられている。

「あなたには感謝しています。妻とめぐり会わせてくれたのですから」
「そ、そうでしょう! ええ、もちろん私のおかげですよ。いやはや、まったく!」

 グレゴリーは誇らしげに自分の胸を叩いて何度も頷いた。

(旦那様、今日はどうしてこんなに饒舌なのかしら)

 アリシアは頬を赤く染め、戸惑いながら食事をするふりをした。
 フィリクスがどんな顔でそんなことを言うのか、怖くなったから。
 飾りの言葉なのか、本心なのか。

 ただ、無性に嬉しくなって、アリシアは口もとにわずかな笑みを浮かべていた。

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