離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 孤児院は町の外れにひっそりと佇んでいた。
 アリシアとフィリクスが訪れると、出迎えた院長は驚いて目を丸くした。

「まさか、侯爵様ご自身がお越しになるとは!」

 恐縮しきりの院長に、フィリクスはただ静かに頷く。
 アリシアが代わりに笑顔で声をかけた。

「驚かせてしまってすみません」
「いいえ。奥様にはいつも本当に感謝しております」

 院長に案内されて中へ入ると、明るい声が響いた。
 子供たちはアリシアを見つけると、一斉に駆け寄ってきた。

「アリシアお姉様!」
「また来てくれたの?」
「今日は何して遊ぶ?」

 アリシアは笑顔で子供たちの頭を撫でながら名前を呼んだ。
 その光景を、フィリクスは黙って見つめていた。
 となりで院長が笑顔で話しかける。

「子供たちは奥様が大好きなんですよ。ご多忙なのに頻繁に足を運んでくださり、本当にありがたいと思っています」

 フィリクスは「そうか」とひとこと返す。
 その目はまっすぐアリシアを見つめている。
 やがて彼はおもむろに、アリシアのそばへ近づいた。

 フィリクスにどう接したらいいか躊躇している子供たちに、アリシアが言った。

「大丈夫。彼はとっても優しい人だから」

 アリシアの言葉に反応したフィリクスは、わずかに頬を赤らめた。

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