離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 実はフィリクスが遠征に行っているときから、アリシアはこっそり町へ出て平民のふりをしながら食堂で働いていた。
 その理由は財政難に陥った侯爵家の足しに少しでもなればという思いからだった。

 とはいえ、まだ子供のアリシアにできるのはせいぜい給仕の仕事程度で、得られる給金も高くはなかった。

 アリシアが嫁いだときからこの家の財政はひっ迫していた。
 使用人を多く雇うこともできず、アリシアは自分の部屋の掃除や食事の準備なども自分でおこなった。
 私物を買うときは必ず自分の稼ぎで賄った。

 両親の遺産はたくさんあったが、後見人の叔父にすべて奪われてしまい、アリシアは所持金ゼロから少しずつ蓄えていくしかなかった。
 働くうちに彼女の中には「ひとりでも生きていけるかもしれない」という自信が芽生えていく。

 そうして、いつしか離婚を意識するようになった。

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