離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 周囲がざわつく中、沈黙を守っていたメルアが静かに口を開いた。

「頭を上げてくださいよ」

 フィリクスが顔を上げると、メルアが静かに笑みをたたえていた。

「そんなことしなくていいんですよ。私たちが平穏に暮らせているのは領主様のおかげですから。堂々としていてもらわないと困ります」

 メルアはそう言いながらアリシアに向かってにっこり笑いかける。
 その笑顔に、アリシアは少しだけほっとした。

「事情はわかりましたよ。アリシアに悪意がないことはみんなわかってる。長い付き合いですから。ねえ、みんな?」

 メルアの問いかけに応えるように、誰かが声を上げた。

「ああ、そうだ。アリシアの優しさは本物だ。誰にでも分け隔てなく接してくれるだろ」

 すると次々に声が上がった。

「そうだ。俺たちに見せる顔が、演技なわけがない」
「悩みや愚痴も嫌な顔せずに聞いてくれるしな」
「アリシアのアップルパイも美味い」

 荷馬車の持ち主の男はばつの悪そうな顔をしていたが、ディーンが肩をぽんと叩くと、彼もおずおずと言った。

「悪かったよ。ちょっとショックだったんだ。俺だってわかってる。アリシアが悪いことしてないってことくらい」

 みんなの声を聞いたアリシアは涙ぐみながら、頬を赤く染めて微笑んだ。

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