離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 メルアは満面の笑みでさらに続けた。

「それにね、領主様はうちの料理を美味いと言って何度も訪れてくれたんだ。素性は隠していたようだがね」

 アリシアが「え?」と声を上げると、メルアは声を上げて笑った。

「あたしもさっき彼を見て驚いたさ。以前何度か来てくれた旅の人だってね」

 フィリクスも戸惑った様子でぼそりと言う。

「気づいていたのか……」
「接客商売だからね。客の顔を一度見たら忘れないさ」

 メルアの言葉にフィリクスもアリシアも呆気にとられる。

「あんたのアップルパイ、旦那も喜んで食べていたよ」
「主人、そのことは……」
「なぜ隠すんですか? ちゃんと言葉にして伝えてやってくださいよ。そのほうが妻としては嬉しいもんなんですからね!」

 フィリクスは赤面しながら目をそらす。
 その顔を見たアリシアも頬を赤く染めて俯いた。
 メルアは穏やかな表情でアリシアに話す。

「誰もあんたを責めたりしないさ。あんたの人柄はみんな知っているからね」
「メルアさん……」
「でもね、けじめはつけなきゃいけないよ。アリシア、今日で解雇だ」

 それを聞いたアリシアは、視線を落とし、唇を引き結んだ。

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