離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 午後になると町の賑わいはピークに達していた。
 アリシアたちは、エレナの知人が営む宿のカフェテラスで軽食をとって休憩したあと、再び町の中心部へと繰り出した。

 噴水のある広場にはたくさんの人が集まり、軽快な音楽に合わせてふたり一組で踊る人々の輪ができていた。

「アリシア様、踊りませんか?」
「え? でも私、踊れるかしら……」
「ダンスのご経験は?」
「社交ダンスは習っていたけれど」
「十分ですわ。ここでは、好きなように踊ればいいんですよ」

 アリシアは笑みを浮かべ、エレナが差し出した手を取る。
 踊りは社交ダンスのような堅苦しいものではなく、自由にステップを踏みながら、相手と気ままに動きを合わせていくものだった。

 アリシアが幼い頃に習っていたダンスの先生はとても厳格で、常に姿勢やタイミングに神経を張りつめるような緊張の連続だった。
 けれど今は音楽に身を任せながら自由に体を動かす。それがたまらなく楽しく感じられた。

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