離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 闇を裂くように打ち上がった火花が夜空いっぱいに咲いては散る。
 色とりどりのその光景に、アリシアは目を輝かせた。

「わっ、綺麗」
「本当に」

 窓は小さいため、アリシアはエレナと肩を並べて夜空を見上げている。
 ふとアリシアは背後を振り返り、セインに声をかけた。

「セイン、あなたも……」
「お気になさらず。興味ありませんので」

 アリシアが戸惑った表情を見せると、エレナがクスッと笑って頷いた。

 次々と放たれる花火が、彩り豊かに夜空を染めていく。
 たしかに綺麗で感動する。しかし、アリシアの胸にはわずかな侘しさがあった。

「旦那様も来られればよかったのに」

 ぽつりとこぼしたアリシアの言葉に、エレナは柔らかく微笑んだ。

「また来年もありますわ」
「えっ……」

 アリシアは言葉に詰まる。
 神殿に離婚申請を出しているのだ。来年には成立し、フィリクスと夫婦ではなくなっているだろう。

(来年も、旦那様と?)

 胸の内が揺れる。
 あれだけ固めたはずの決意なのに、離婚が近づくにつれて心が不安定になっている。
 そんな自分にさえアリシアは呆れを感じた。この3年間、何のために覚悟してきたのかと。
 それでも、とりあえず場を取り繕うように無難な言葉を口にする。

「そうね。来年があるわ」

 そう言った次の瞬間、カタンと背後で何かが動く音がした。
 振り向く前に、低く落ち着いた声が響く。

「今年も見れる」
「だ、旦那様?」

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