離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 振り返ると、そこには息を切らせたフィリクスが立っていた。
 驚いて絶句するアリシアに、エレナがそっと耳打ちする。

「用事が済みましたらここに来るよう、お伝えしておいたのです。間に合ってよかったですわ」
「エ、エレナったら……!」
「アリシア様、素直になってくださいませ」

 そう言ってエレナはセインを促し、部屋を出ていった。

 ふたりきりになった屋根裏部屋の、小さな窓は一つだけ。
 そこから夜空を覗くには、自然と体を寄せるようになる。

 さっきまでエレナと肩を並べていたはずなのに、相手がフィリクスとなると違う。
 アリシアは気まずさから少し距離を取って立った。
 しかし、フィリクスが静かに口を開いた。

「もう少しこちらに来たらどうだ。そこでは見えないだろう」
「そ、そうですね……」

 おずおずと近づくと、腕がフィリクスに触れて、アリシアの鼓動が跳ねた。
 ふたりは立ったまま、しばらく黙って花火を見上げていた。

「綺麗、ですね」
「ああ」

 また、静かな時間が流れていく。

(どうしよう。花火を見る余裕がないわ)

 アリシアは緊張のあまり、手が震えた。

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