秘密の多い後輩くんに愛されています
告白と秘密
翌朝はいつもより二本早い電車に乗って駅構内の書店に立ち寄った。
平積みにされていた暁先生の新刊を一冊手に取り、レジへと直行する。
暁先生は六年前、現役高校生作家としてデビュー。
恋愛小説からミステリー小説まで幅広いジャンルの小説を執筆していて、丁寧な心理描写と言葉選びが魅力な作家さんだ。
私が大学一年生の頃に発売した暁先生のデビュー作。『君に告げるさよなら』はもう何度読んだかわからない。
「今日はノー残業デーだし、家に帰ったらゆっくり読もう」
***
オフィスに着いたら真っ先にパソコンを立ち上げて企画書を練る。
昨夜、三時間続いた恋バナのあと、新商品のPR企画経験が豊富な侑里が色々と話を聞かせてくれた。
そこで、思いついていた案の実現性を考えながら企画書に自分の考えを落としていく。
「……長くなりそうだし、先にコーヒーでも入れてこようかな」
今日は誰もいないといいけれど。
そんなことを思いながら給湯室に向かっていると、出社してきた清水さんと廊下で鉢合わせた。
「あー……おはよう、清水さん」
「お、おはようございます。舞花先輩」
眉は下がり、口角は上がりきっていない。
こんなにも引きつった笑顔の清水さんを見るのは今日が初めてだ。