秘密の多い後輩くんに愛されています
「なるほどね。上田がその子たちの話を否定してくれたからってこと。へー、他人に興味ないタイプに見えるのにいい奴じゃん」
「正直、私も意外だった。上田くんとはそこまで話したことがないし」
「実は舞花のことが好きだったりして」
顔の横で親指と人差し指を交差させたハートを作る侑里。
“舞花のことが好きだったりして”
頭の中で侑里の言葉がリピート再生のように何度も流れて、お酒に強く、飲んでも顔色の変わらない私の頬が赤く染まるのを感じた。
「何言ってるの。上田くんは後輩として先輩の私を庇ってくれただけでしょう」
「それだけで面倒事に足を突っ込むタイプ〜? 年下もいいじゃん。それとも社内恋愛はもうこりごり?」
「ちょっと勝手に話を進めないで。私のことよりも侑里はどうなったの。K社の人と合コンしたんでしょ」
「あー、あれね」
酔っ払った侑里相手になんとか話を逸らすことに成功。
それから三時間、侑里の恋バナは続いた。
「それじゃあ、またね」
「うん。また明日」
侑里とは駅で別れて、一人暮らしのマンションに帰る。
手短にシャワーを済ませた私は、まだ湿り気の残るセミロングの髪をシュシュでひとつに結んでからベッドに倒れ込んだ。
「あっ……暁先生の新刊、結局買えなかった」
今日はそれどころじゃなかったから仕方ない。明日、出社前に書店に寄ろう。
いつもより二十分早いアラームをセットした私は、そのまま深い眠りについた。