秘密の多い後輩くんに愛されています
「き、昨日は本当にすみませんでした」
「私への謝罪ならもう十分だよ。だけど、上田くんにはきちんと謝ってね。今日も一日頑張ろう」
「……はい」
いつもと変わらないテンションで話しかけたつもりだけれど、清水さんは終始暗い表情をしたままだった。
昨日の今日だしあの態度も無理はないか。
普通に話せるようになるまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。
給湯室に置いてあるマグカップを手に取った直後、背後から声をかけられた。
「白鳥先輩、おはようございます」
「……あ、おはよう。上田くん」
隣で自分のマグカップを探す上田くん。
昨日から思っていたけれど、上田くんは上田くんで普通すぎる。
平静を装っているようにも見えないし、やっぱり昨日は後輩として私を庇ってくれただけだよね。
「おーい、白鳥。ちょっと急ぎで来てもらってもいいか? パソコンが変なんだよ」
廊下にいた先輩が慌てた様子で給湯室へと顔を出す。
「はい。今、行きます」
持っていたマグカップをラックに戻そうとした時、隣にいた上田くんに声をかけられた。
「白鳥先輩コーヒーですか? 俺、入れときますよ」
「えっ、でも……」
「ついでなんで」
「じゃあ、頼んでもいいかな? ありがとう」
上田くんにお礼を言ってから給湯室を出た私は先輩のデスクへと急いだ。