秘密の多い後輩くんに愛されています

他の社員はその光景を一瞥してまたすぐに自分のデスクへと視線を移した。

静まり返ったオフィスには、またカタカタとキーボードを叩く音が戻ってくる。

企画部の社員にとっては見慣れた光景だからだ。

ああ、また始まった。その程度の認識なのだろう。

三か月前に入社したばかりの新入社員は自分に火の粉が降りかからないようにパソコンを直視する。

「部、部長。申し訳ありません」

深く頭を下げる彼女を見て私は自然と椅子から立ち上がっていた。

視界の隅では侑里が小さく首を横に振っている。

彼女が何を言いたいのかはよくわかる。

しかし、私の歩みが止まることはなかった。


「部長どうされましたか?」

「白鳥、ほら見ろ。こことここに誤字があるだろう。入社して二年になるのに資料もまともに作成できないとはな。いつまでも新人気分でいられちゃ困るんだよ」

入社して四年にもなれば表情や挨拶の仕方ひとつで部長の機嫌が手に取るようにわかるようになる。

今日は悪。それも最悪の日だ。

また奥さんと喧嘩でもしたのかな。


隣にいた清水さんは大きな瞳に浮かんだ涙の粒をこぼさないようにきつく下唇を噛んでいた。

デスクから見ているだけでは、そんな彼女の姿には気づかなかっただろう。

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