秘密の多い後輩くんに愛されています
もう気持ちは隠さない
三日前、会社の後輩である上田くんに二つの告白をされた。
一つ目は、彼が私を好きだったということ。
そして、もう一つは大好きな小説家の暁先生が彼だったということ。
あんなに楽しみにしていた暁先生の新刊は、ページをめくるたびに上田くんの顔が浮かんできて読み進めることができなかった。
「どういう顔をすればいいんだろう……」
一階のエレベーターホールで十、九、八と順番に点灯するライトを見つめていると横からひょこっと顔を覗き込まれた。
「朝一緒になるなんて珍しいな」
「……田島くん」
ブランドもののスーツをビシッと着こなし、腕につけた高級ブランドの時計で時間をチェックする彼に朝から熱い視線を注ぐ女性社員たち。
「金曜、忙しかった?」
「企画部の人たちと飲みに行ってたの」
克樹とは同期入社で、新人研修を通して仲良くなった。
T大卒で帰国子女とわかりやすく高スペックな上に眉目秀麗な容姿ときたら女性社員が放っておくわけがない。
常に輪の中心にいる克樹をよく思わない男性社員も多くいたが、彼はその人たちを実力で黙らせていった。
一年目から営業部のエースと期待されていた克樹と同期というだけで飲み仲間だった私の関係が変わったのは二年前、彼からの告白がきっかけだった。
『俺、舞花といると素でいられるから楽なんだよね』
克樹は私といる時、よくその言葉を口にした。