秘密の多い後輩くんに愛されています
私と彼との間に溝が生まれたのは四か月前。
付き合って一年半が経った頃だった。
ふたりで出掛けている時に偶然、目に入ったウェディングドレスを見て「綺麗」だとつぶやいた私に克樹はこういったのだ。
『俺は舞花といるのが楽だから一緒にいるだけで、結婚なんて面倒なことは考えてないから』
克樹との結婚を考えていた私は、そうはっきりと言われたことで彼との交際の先に私の思い描く未来はないのだと悟った。
それから何度か別れ話を重ねて、私たちは友達に戻ることにした。
「また予定が合ったら飲みに行こうぜ。白鳥と飲むのが一番楽なんだよ」
楽、楽、楽。またそれ。
「そうだね。また侑里にも声かけておくよ」
「俺は別にふたりでもいいけど」
何て答えるべきか迷っていると、克樹に視線を注いでいた女性社員が次々に後ろを向いてざわめき出した。
「なんだ?」
「さぁ」
私もつられて振り返る。
「あんなかっこいい人、うちの会社にいた?」
「知らない。今年入社したばかりの新入社員じゃないの?」
コソコソと話し出す女性社員の間を縫って歩いて来たのは、端正な顔立ちをした男性社員だった。
「白鳥先輩!」
私を見つけた途端、笑顔で駆け寄ってくる彼。
だ、誰……?
私にこんな華やかイケメンの知り合いなんていたっけ。
でも、声は聞いたことがあるような……。