秘密の多い後輩くんに愛されています
上田くんと出掛ける約束をした日曜日。
いつもより早起きをして、昨夜選んでおいた花柄のワンピースに着替える。
仕事の時、ひとつに結んでいる髪は下ろして毛先だけ軽く巻いた。
最後に鏡を見てほんのり紅いティントを唇に乗せてから家を出る。
待ち合わせ場所は駅前の広場。
まだ約束の時間前だというのに、待ち合わせの場所にはすでに上田くんが到着していた。
オリーブ色のセットアップに、いつもよりも少しだけ無造作にセットされた髪。
仕事の時とはまた違う上田くんの姿に胸がときめく。
私に気づいた彼は持っていたスマホをしまって駆け寄ってきた。
「上田くん早くない?」
「そういう白鳥先輩もまだ十五分前ですよ」
「あっ、本当だ」
広場にある時計台は約束の十五分前を指している。
そういえば、新年会や忘年会でお店に集まる時はいつも早い組だった私たち。
「俺は一秒でも早く白鳥先輩に会いたくて家を出たんですけど、先に着いていて正解でした」
「正解?」
「だって、こんなにも可愛い人をひとりにはしておけないですから」
小説に出てくるような台詞をさらりと口にする上田くん。
「あっ、今作家っぽいとか思いましたか?」
「……少し」
「俺が白鳥先輩に言うのは台詞じゃなくて全部本心です」
上田くんのストレートな言葉に鼓動は高鳴る一方だ。
服もヘアメイクも頑張ってよかった。