秘密の多い後輩くんに愛されています
「今日はデートだと思ってもいいんですか?」
「うん」
「じゃあ、手を繋いでも?」
「こ、こんな手でよければ」
「なんですかそれ」
少し前までは上田くんがこんなふうによく笑うなんて知らなかった。
握られた手からは彼の体温が伝わってくる。
この時間が長く続けばいいのにと思う時点で、もう答えは決まっているようなものだ。
「先輩、どうかしましたか?」
「う、ううん。なんでもない」
私たちは近くのショッピングモールでお互いの服を選んだり、書店でおすすめの小説を教え合ったりした。
夕食はパスタが有名なお店にふたりで並び、そのあとは展望台からの景色を楽しんだ。
「明日も早いですし、そろそろ帰りますか」
腕時計で時間を確認した上田くんがベンチから腰を上げる。
私は咄嗟に彼の腕を掴んで、制止した。
「白鳥先輩?」
「まだ時間が大丈夫なら少し話がしたいんだけど……いいかな?」
「俺は大丈夫ですよ。白鳥先輩といられる時間が増えて嬉しいです」
再びベンチへと腰を下ろした上田くんに私はどうしても聞いておきたかったことを尋ねる。
「あの質問してもいいかな?」
「どうぞ?」
「上田くんって私のどこを好きになってくれたのかなって……。上田くんのことを知れば知るほど、なんで私なんだろうって思うことが増えたの」
上田くんなら私以外にもいい人はたくさんいるだろうに、
どうして私だったのだろう。