秘密の多い後輩くんに愛されています



「責任感が強いところや、面倒見がいいところ、感情が表情に出やすいところや、笑顔が可愛いところ。それから……」

「も、もう大丈夫。ありがとう」

このままだとキャパオーバーを起こしそうだ。


「でも、それは入社してから知った白鳥先輩のことです。俺が白鳥先輩を好きになったのは、俺が大学生三年の時ですから」

「だ、大学三年生の時……?」

私が今の会社に入社してまだ一年目の時だ。

「実は父がゆきのフーズに勤めていて、入社前に一度会社を訪れたことがあるんです。その時、屋上の休憩スペースで暁の小説を読む先輩に出会いました」

入社当時、慣れない環境にストレスを抱いていた私は暁先生の小説をお守りのようにして毎日会社に持っていっていた。

休憩時間には人の少ない屋上で暁先生の小説を読む。その時間があったから今日まで頑張ってこれたのだ。

「その頃の俺はデビューしてから四年が経っていて、書きたいものなんてもうないと思っていました。実際、就活もしてましたし」

そういえば昔、暁先生のインタビューが乗った雑誌に筆を折りかけた時があると書いてあったのを思い出した。

あの頃は暁先生の小説が読めなくなると思い、大きなショックを受けたけれど、半年後には新作が発表されて今も暁先生、上田くんは執筆を続けてくれている。

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