秘密の多い後輩くんに愛されています
やはり付き合ってもいないのに結婚の話は重かったのだろうか。
これが最後のデートになるかもしれないなんてことを考えていたら、隣に座っていた上田くんが勢いよく立ち上がった。
「それってつまり白鳥先輩は俺との結婚まで考えてくれてるってことですか」
「う、うん」
「まじか……」
今度は口元を手で押さえながらしゃがみ込んだ上田くん。
こんなに落ち着きのない彼を見るのは初めてだ。
「俺だって結婚まで考えてますよ。というか、俺のほうが考えてます。何年好きだったと思ってるんですか」
上田くんの声は思いのほか大きくて、プロポーズだと勘違いした周りのお客さんからの温かい拍手に包まれた。
「なんか俺たち祝福されてます……?」
「みたいだね。まだ付き合ってもないのに」
上田くんとふたりで顔を見合わせて笑う。
「白鳥先輩、改めて言わせてください。俺と結婚を前提に付き合ってください」
膝に置いていた手が彼の大きな手に包まれた。
私の答えはもう決まっている。
「はい。よろしくお願いします」
そう返事をすると、腰を上げた上田くんが私の唇に自分の唇を重ねた。
「周りの人が見てるんじゃ……」
「もう誰も見てませんよ。皆、夜景に夢中なんで。だから、もう一度だけ」
二度目のキスは不意打ちだった一度目よりも緊張して、呼吸の仕方すら忘れそうになった。