秘密の多い後輩くんに愛されています
「それにしても今日の部長の機嫌最悪だったよね。舞花先輩が助けてくれなかったら麗奈、昼休憩まで怒られてたんじゃない?」
ひとりの女性社員の言葉のあとに数人の笑い声がする。
「本当、麗奈はミスばっかりしてるとまた怒られるよ」
「大丈夫、大丈夫。その時はまた舞花先輩に助けてもらうから」
「麗奈は舞花先輩に甘えすぎ」
「いいの。だって、勝手に庇ってくれるんだもん」
給湯室には清水さんのひときわ甲高い笑い声が響いた。
清水さんはミスも多いけれど、一生懸命で場を明るくしてくれる後輩。
私の中では入社当初からずっとそんなイメージだった。
『舞花先輩いつも迷惑をかけてすみません』
そう言って缶コーヒーを差し入れしてくれた清水さんと今、給湯室にいる清水さんは本当に同一人物なのだろうか。
廊下に私がいることなど知る由もない彼女はそのまま話を続ける。
「それにWin-Winでしょ? 舞花先輩だって私のおかげでいい人アピールができるんだから。私を使って上に取り入ろうって魂胆が見え見えなのよね」
「あれってそういうことだったの?」
「皆見る目ないなー。あの人結構、したたかだよ」
入社した頃から『舞花先輩、舞花先輩』と慕ってくれる彼女のことを可愛く思っていたのは私だけ。
初めて知る後輩の本音に胸の奥が苦しくなった。