秘密の多い後輩くんに愛されています


「それにしても今日の部長の機嫌最悪だったよね。舞花先輩が助けてくれなかったら麗奈、昼休憩まで怒られてたんじゃない?」

ひとりの女性社員の言葉のあとに数人の笑い声がする。

「本当、麗奈はミスばっかりしてるとまた怒られるよ」

「大丈夫、大丈夫。その時はまた舞花先輩に助けてもらうから」

「麗奈は舞花先輩に甘えすぎ」

「いいの。だって、勝手に庇ってくれるんだもん」

給湯室には清水さんのひときわ甲高い笑い声が響いた。

清水さんはミスも多いけれど、一生懸命で場を明るくしてくれる後輩。

私の中では入社当初からずっとそんなイメージだった。

『舞花先輩いつも迷惑をかけてすみません』

そう言って缶コーヒーを差し入れしてくれた清水さんと今、給湯室にいる清水さんは本当に同一人物なのだろうか。


廊下に私がいることなど知る由もない彼女はそのまま話を続ける。

「それにWin-Winでしょ? 舞花先輩だって私のおかげでいい人アピールができるんだから。私を使って上に取り入ろうって魂胆が見え見えなのよね」

「あれってそういうことだったの?」

「皆見る目ないなー。あの人結構、したたかだよ」

入社した頃から『舞花先輩、舞花先輩』と慕ってくれる彼女のことを可愛く思っていたのは私だけ。

初めて知る後輩の本音に胸の奥が苦しくなった。

< 5 / 50 >

この作品をシェア

pagetop