あなたと私を繋ぐ5分
「私が今日見つけた小さな幸せは、朝、会社に向かう途中に見かけた光景で……小学生くらいのお子さんが二人歩いていたんです。お姉ちゃんと弟でしょうか。弟さんが、雨が苦手みたいで、お姉ちゃんがずっと手を握って歩いてあげているんです。片手に傘を持っているから、繋いだ手は二人とも濡れてしまっているんですが、それでも離さずぎゅっと。それでも弟さんは雨が嫌みたいで、ちょっと泣いてしまっていたんですね。そうしたら途中から、お姉ちゃんが歌を歌い始めたんです。それも多分、替え歌で。弟さんの名前を入れてあげて」
彼の声で伝えられると、その出来事を頭のなかで鮮明に思い描けた。
雨の降る歩道。レインコートを着て長靴を履き、傘を差して歩く姉弟。雨が嫌だと泣く弟に、楽しませてあげようと歌をうたうお姉ちゃん。
「集団登校だったんでしょうね。そのうち、何人かの小学生が合流して。皆でその替え歌を歌ってあげてるんです」
「僕は歌が下手なので、その歌は再現できないんですけど」と少しだけ笑った。
その分いつもより声が上擦って、新鮮さを覚える。
「たまには雨でもいいな、と思えましたね。しばらく雨が続くみたいなので、また彼女たちに会えることを楽しみに出勤したいと思います」
それではまた明後日お会いしましょう。あなたのまわりにある小さな幸せのかけらがみつかりますように。
いつもの締めの言葉を囁いて、波の音を少しだけ残し、番組は終了した。
替え歌。替え歌か……いったいどんなメロディに名前を乗せてあげたのだろう。
少しくらい――鼻歌でもいいから歌ってくれたらいいのに。
そう思いながらも、いつものあの落ち着いた低音以外の声を聞いたら、恥ずかしくなってしまうかもしれないな、と美咲は聞いたことのない歌を想像した。
彼の声で伝えられると、その出来事を頭のなかで鮮明に思い描けた。
雨の降る歩道。レインコートを着て長靴を履き、傘を差して歩く姉弟。雨が嫌だと泣く弟に、楽しませてあげようと歌をうたうお姉ちゃん。
「集団登校だったんでしょうね。そのうち、何人かの小学生が合流して。皆でその替え歌を歌ってあげてるんです」
「僕は歌が下手なので、その歌は再現できないんですけど」と少しだけ笑った。
その分いつもより声が上擦って、新鮮さを覚える。
「たまには雨でもいいな、と思えましたね。しばらく雨が続くみたいなので、また彼女たちに会えることを楽しみに出勤したいと思います」
それではまた明後日お会いしましょう。あなたのまわりにある小さな幸せのかけらがみつかりますように。
いつもの締めの言葉を囁いて、波の音を少しだけ残し、番組は終了した。
替え歌。替え歌か……いったいどんなメロディに名前を乗せてあげたのだろう。
少しくらい――鼻歌でもいいから歌ってくれたらいいのに。
そう思いながらも、いつものあの落ち着いた低音以外の声を聞いたら、恥ずかしくなってしまうかもしれないな、と美咲は聞いたことのない歌を想像した。