引きこもり令嬢の契約婚約
『そんなことよりセアラ! 私は文句を言いに来たのよ。エリオットを泣かせるなんて!』
「ホワイティ様……」
『あの子を本気にさせておいて、逃げるなんて許さないわよ』
ホワイティの声は予想外にドスが効いている。
あまりにも衝撃的なことが多すぎる。
待ちに待ったホワイティとの対面で、モグラの聖獣に加護を与えられ、憧れの聖獣からは怒られる。
どう考えてもおかしいし、それが自分の身に起きたことも信じられない。どうしてに対する答えは出ず、セアラの思考はドーナツ状にグルグルと回っていた。
その時だ。
『ねえさん、ねえさん、セアラがビビってるよう』
モグラの聖獣がセアラの足元に引っ付いたまま、ホワイティを見上げて訴えていた。
「……モグラさん……」
しゃがんでモグラを手のひらにのせて頭を撫でると、少しくすぐったそうに身を寄せてくる。小さな瞳でパチパチと瞬きをして、陰になるところを探しているようだ。セアラは開いている手で日差しを遮ってあげた。
『ありがとう。セアラ。私のことはネルって呼んでね』
「ネル様?」
『呼び捨てでいいよ。堅苦しいのは苦手なの』
「でも、聖獣様に……えーと。うーんと。では、ネルちゃんではいかがですか?」
小さくてかわいいから、〝さん〟付けもなんか違う。だけど、さすがに聖獣を呼び捨てにする度胸はセアラにはない。
『いいね。かわいい。敬語もいらないよう。わたしね。セアラのこと、シーグローヴ領にいたことから知ってるの』
モグラ──ネルは小さな目を細めて微笑む。周りも和ませてくれそうな幸せそうな笑顔だ。
「領地にいたモグラさんなの?」
『うん。セアラが来てからね、あの土地の土がとっても良くなったの。だからうれしくって』
たしかに、薬草畑を作るときにいろいろと土壌改良はした。セアラがというか、専門家を呼んでいろいろ肥料を配合してもらったのだが。