引きこもり令嬢の契約婚約

「謙遜は美徳ではなくてよ。確かにあなたは引きこもりだけど、他の令嬢にはない知識が豊富にある。加えて聖獣の加護があるとくれば、王太子妃として最も適任だと言えるわ。それに、さっきからエリオット様の迷惑に……とか言っているけど、あなた自身はどうしたいのよ。本当に婚約破棄でいいの?」
「それは……」

 思えば、自分の心と向き合うことをずっと避けていた。
 自分の意志を通したところで、人に迷惑をかけるだけだと思っていたから。

「迷惑をかけるくらいなら、身を引いた方がいいとは思っています」

 ふわりとホワイティが飛び上がり、セアラの腕に止まった。当然だが足には鉤爪があり、ドレスの薄い布の上から食い込んでくる。

「いたっ、痛いです、ホワイティ様!」
『うるさいわね。そういうところがむかつくのよ。どうしてあんたは、あんたのことを好きだって言う人間の言葉を信じないの?』

 セアラが涙目になったのを見て、ホワイティはまだ不服そうな様子ながらも、腕から離れた。

『シーグローヴ侯爵もあんたの弟も、エリオットも。そのままのあんたを否定なんかした? どうして敵意丸出しのキャンベル公爵の娘の言葉を真に受けているわけ?』
「それは……」

 言われてみればそうだ。ただ、セアラは自分を非難する言葉の方が正しいと思ってしまった。その理由は……。

「自信が……ないから。私が、信じてないから……自分を」

 これまで、父やソフィアが何度も伝えてくれたのに、自分で言葉にすることで、ようやく実感として腑に落ちる。

(そう、自信が無くて。自分が誰かを幸せにできるなんて思えなくて)

 誰かに否定されるのが怖いから、自分で自分の限界をここだと決めて、飛び出さないようにしていた。
 自分を守るだけなら、それでよかったから。
 袖口からネルが顔を出し、つぶらな瞳で見上げてきた。

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