引きこもり令嬢の契約婚約
『セアラはいい子だよ。草花のこともよく知っているし、優しい。私は大好き』
「……ネルちゃん……」
『聖獣に好かれるって、すごいことなのよ。アンタがなぜ自分に自信が持てないのかわからないけど、そこまで自信がないなら、自分を信じるんじゃなくて、あんたが好きな人たちを信じればいいんじゃない?』
「ホワイティ様」

(私が好きな人たち……)

 父、マイルズ、ソフィア、そして……エリオット。

(みんな、そのままの私でいいって言ってくれる人たち)

 自分を否定することは、そのままの自分を愛してくれる人を貶める行為だと、ソフィアが言っていた。

 確かに人を置き換えてみればわかる話だ。例えばマイルズが、「自分なんて駄目だ」と言っていたら、セアラは悲しいだろう。「そんなことないよ」という言葉さえも聞いてもらえないのなら、無力さに泣きたくなる。
 ようやくそれを実感して、胸が締め付けられるような気がした。

「私……なんてことをしていたのかしら」

 目の前が開けていく。自分の周りにしか光が当たっておらず、自分のことしか見えていなかったセアラの視界に、光が広がっていく。
 こんな近くに、父もマイルズもソフィアもいたのに。みんな、温かいまなざしをセアラに注いてくれていたのに。セアラは自分だけを見つめて、勝手に自分はだめだと思い込んでいた。

(エリオット様まで傷つけて……)

『これ以上、泣かせたくないんだ。君が、好きだから』

 あの時の告白の言葉が、ようやくセアラの心の奥に届く。

(あんな風に思ってくれていたのに。私は……)

 エリオットを笑顔にするために、セアラにできることはあるだろうか。
 少しでもいい。彼の抱える重荷を、軽くすることはできるのだろうか。
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