引きこもり令嬢の契約婚約
「ホワイティ様、私、……エリオット様の助けになれるでしょうか」
『は? なによいきなり』
「あの時みたいな悲しい顔。もうさせたくない。そのために、私にできることってなんですか?」

 セアラだって、エリオットの傷つく顔は見たくない。自分が離れることで悲しませてしまうのなら、傍にいて笑顔にさせる方法を見つけたい。

(そうよ。弱気になっている場合じゃない。好きな人達を守りたいなら、強くならなきゃいけなかったのに)

 そのための力をくれる人は、周りにいる。父、マイルズ、そしてソフィアも。

『セアラ、大丈夫?』

 小さなモグラが、セアラの手首のあたりでもぞもぞと動く。

「ネルちゃん、私、変わりたい。……勇気が欲しい。どんな困難が目の前にあっても、逃げずに立ち向かう勇気が」

 ようやく心が決まり、おなかの底から力が湧いてくるような気がした。

『じゃあ、わたしがセアラの勇気になってあげる。加護も与えたし、これからはずっと一緒にいるつもりだから』
「ネルちゃん……」
『セアラが不安になったら、いつでも呼び掛けて』

(私……なんて恵まれているんだろう)

 いろんな人が、セアラに力を分けてくれる。自分だけを見て落ち込んでいた時はそれに気づけなかった。
 セアラの前向きな言葉に、ソフィアとホワイティの表情が優しくなった。

『まあ、悔しいけど、今のエリオットを救えるのはあなたなんでしょうね』
「あなたがエリオット様の許へ戻るというなら、いくらでも協力してよ。また私の方に縁談が来ても困るもの」
「ありがとう。ソフィア様。ホワイティ様」

 婚約破棄を撤回したいなんて、虫のいいことを言っているのかもしれない。
 それでも、伝えてみようと思った。

(私も、エリオット様が好きだって)

『そうね。私に任せなさい』

 そう言うホワイティは自信の権化のようで、セアラは改めて彼女に尊敬の念を抱くのだった。
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