引きこもり令嬢の契約婚約
キャンベル公爵家は王家筋なので、良くも悪くも影響力がある。エリオットの亡くなった母親も、随分と頼りにしていたようだった。味方にすれば心強いのかもしれないが、セアラの場合は、アドレイドの対抗馬と思われている以上、よくしてもらえることはないだろう。
(でも、ここまでセアラがダメージを受けるのは予想外だったな)
「……で、用件はなにかな? キャンベル公爵」
「ああ、そうですな。以前、殿下が提出された国立美術館設立の件で」
「あれには反対だったんじゃないのかい?」
文化大臣であるキャンベル公爵が反対であれば、議会への提案さえできない。そう思い、以前から内々に打診をしており、数か月前に却下されていた案件だ。
「ええ。ですが、文化振興に力を入れたいという殿下の想いを無下にもできますまい。お時間があれば、折衷案を共に考えたいと思っております。つきましては、文化室の方に資料があるため、ご足労いただければと……」
「わかった。ローランド、アーサー、資料を持ってついてきてくれるかい?」
どういう風の吹き回しかは知らないが、これはチャンスだ。長年の夢である文化施設の設立向けて、キャンベル公爵は欠かせない人物である。
意気込んでエリオットが文化室に向かうと、そこになぜかアドレイドがいた。
「さあ、こちらにおかけください、殿下。アドレイド、お茶を入れてくれるか」
「……キャンベル公爵。貴殿のご息女はまだ学生ではなかったのかい?」
眉を寄せたエリオットに、キャンベル公爵は笑顔で続ける。
「娘は家庭教師から今学期の学習課程に関して、修了のお墨付きをいただいております。なので、実技のある授業のときのみ学園にいっているのですよ」
「そんな特別扱いは聞いたことがないが?」
「殿下だって、公務での欠席分は家庭教師との学習で代替されていたでしょう」
「それはそうだが」
王太子の公務と公爵令嬢のお茶くみが同等だとでもいうのだろうか。