引きこもり令嬢の契約婚約
 そもそも、官僚でもないアドレイドが、父親が大臣だというだけで出入りしていることにも問題はある。
 文化大臣は教育関係の長でもあるため、公爵が認めているならば、そのやり方も許されるのだろうか。

「さあ、アドレイド、お茶を」
「はい、お父様」

 アドレイドは、メイドと共にお茶を入れ始める。
 言いたいことはいろいろあったが、エリオットは言及しないことにした。今は彼女のことよりも先に話し合いたいこともある。

「で、公爵、本題についてだが」
「国立美術館の設立についてですな。まず、以前この案を殿下に提出された時に反対した経緯からお話しましょう。この国は自然信仰が強く、そもそも芸術品の類は多くありません。数少ない美術品を所持しているのは、貴族……お分かりですか?」
「ああ。そうだね。だが一部の貴族が独占しているような状況もどうかと思うんだ。文化とは広く人に分かち合われるものだろう」
「そこが、我々と殿下との意見のすれ違っている点なのです。殿下は平民も含め、広く文化を広めたいと仰せですが、実際に平民がそれを理解するとは思えません。そして貴族にとっても、美術品は財力や教養を示す手段。国に譲ることに了承しないでしょう」

 まるで文化を理解できるのは貴族だけだと言わんばかりの態度に、エリオットは少なからず不快になる。
 とはいえ、ことを荒立てては何事も進まない。表面上は穏やかに微笑んで、エリオットは先を続けた。

「最初からすべてうまくいくとは思っていない。まずは国で保有している美術品や、聖獣に関する資料の展示を中心にしてもいいと思っている。公爵は平民には理解できないというが、すべての民が学問を学び、芸術を理解できるような豊かな国をつくるためには、まず試してみなければ始まらないだろう」
「殿下のおっしゃることは理想に過ぎない」

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