引きこもり令嬢の契約婚約
 見合いは、三人の候補者が鉢合わせしないよう、それぞれ一日ずつ、計三日にわたって行われるはずだ。セアラが最後なので、彼女はもう終わっているだろう。だとすればなぜ、今日ここにいるのだろうか。
 アドレイドはセアラをじっと眺めると、あからさまにほっとしたように笑う。

「セアラ様は夜会にも出ていらっしゃらないので、どんな方なのかと気になって見に来ましたが……。ふふ。安心しましたわ」

 邪気の無い笑顔で辛辣なことを言われ、思わず顔が引きつった。
 高位の貴族令嬢であるならば、この程度の嫌味は笑顔でかわさなければならないのだが、セアラの表情筋は正直すぎるのだ。それも、引きこもりとなった理由のひとつである。
 黙ってしまったセアラに、アドレイドはますます声を高くした。

「王太子妃にふさわしいのは、身分を考えても私のはずです。わざわざ他の方ともお会いするなんて、エリオット様のお手間を増やすだけだわ」

「えっと……、その」

 それを決めるのは、アドレイドではないだろう。もちろん、セアラでもエリオット本人でもない。王家の結婚に、個人の意思が介入する余地はあまりないのだ。

「そうかもしれません。……が、決める権利は私たちにはありませんわ。ここで言い争うことには、あまり意味はないのではないですか?」

 苦手なりに言葉を紡いで、ぎこちなくも笑顔を作ると、アドレイドはあざ笑うように、笑みを深くする。

「あら、嫌そうなお顔。でもね、私は、あなたのことを心配しているのです。社交もできないような方が、無理して王太子妃になっても苦労するだけだとお伝えしたくて……」

 アドレイドは扇で口元を押さえながらも、高いよく響く声で続ける。
 その仕草からも、セアラを小馬鹿にしているのは、明らかだ。
 とはいえ、セアラは人から嘲笑されているのは慣れているので、特にショックにも感じない。悲しい話だがおおむね事実だし、だからこその引きこもりである。
< 11 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop