引きこもり令嬢の契約婚約

 なにを懸念されているのかわからない。皆に美術品を見てもらえるいいチャンスだし、キャンベル公爵もアドレイド嬢も協力的な態度だった。

『エリオット!』
「……ホワイティ?」
『ちょっといらっしゃい!』

 白い羽をばたつかせて、ホワイティが呼び掛ける。

「ごめん、ローランド。執務室に戻ってて」

 エリオットはホワイティの方へと歩く。彼女が生み出す風を浴びているうちに、頭の中にいろいろな懸念事項が浮かび上がってきた。

「……あれ?」

 先ほどまで、頭がすっきりしていたのに。
 憂慮すべきことが頭から消え、キャンベル公爵のまっすぐな言葉がとても頼もしく思えた。すべて彼に任せていれば問題ないと思うような……。

「……待て。それ、おかしくないか?」

 エリオットが立ち止まると、ホワイティが腕に乗ってきた。
 もちろん、キャンベル公爵の意見に正しい点は多い。しかし、エリオットのやりたいことと、先ほどの提案が同じかと言えばそうでもない。
 平民たちに美術や文化に触れてほしい。そのためには、基盤となる知識をつけさせることが前提条件だ。
 しかし、ローラントの言う通り、キャンベル公爵の案には、公爵家の美術品を展示して権威を示す以外の意図が感じられない。

『大丈夫? エリオット。あなた、変な顔をしていたわ』
「変な?」
『それになんか変な匂い。なにか食べた?』
「口にしたのはお茶くらいだよ。それにそんなにおかしなものじゃ……」

< 113 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop