引きこもり令嬢の契約婚約
セアラがランプを消して、ベッドにもぐりこむと、枕の下に隠れていたネルが、ぴょこりと顔を出す。
『夜は暗くていいね』
昼間よりも元気そうだ。まぶしくないからか、目もぱっちり開いている。
「こうすると秘密基地みたいよね。子供の頃、マイルズと布団の中に隠れておしゃべりしたのを思い出すわ」
母親の死期が近づいていた頃、セアラもマイルズも子供ながらに不穏な空気は察していた。不安をごまかすようにふたりでしゃべり続けて、いつの間にか眠っていた日々があったのだ。
『セアラとマイルズは仲がいいんだね』
「そうね。子供の頃はお父様と離れて暮らしていたし、お母様も体調が悪かったから、自然とふたりでいることが多かったかも」
『へーいいな』
「ネルちゃんも、ホワイティ様のことねえさんって呼ぶよね? 仲がいいんでしょう?」
『ホワイティねえさんは、面倒見がいいから』
ネルの話によると、この国の聖獣たちは、ほとんどがルングレン山に住んでいるらしい。
『ルングレン山は、入山に制限があるから、人に汚されずに自然が多くて聖なる空気がたくさんあるんだよ。聖獣って、聖なる空気が栄養みたいなものなの。だから、聖獣の多くはそこに住むってわけ』
「なるほど、そうなのね」
『私はモグラだから、土の中に潜っていることが多いの。ルングレン山は雪山でしょ? でも雪を掘るのは冷たいから。私はあんまりそこにはいないんだ』
ネルは小さな手にはーっと息をふきかける。
『その代わり、国内の空気がきれいなところを転々としているんだ。セアラが土壌改革してから、シーグローヴ侯爵領も綺麗な空気になってきたんだよ。だからセアラのこと、気になってた』
「そうなんだ」
ちゃんと、気に入ってくれたことにも理由があって、それはセアラの自信のひとつになる。