引きこもり令嬢の契約婚約

 父がいるはずの応接室に戻ると、すでに王とその側近、そして鷹のフランクリンが来ていた。

「父上、遅くなりまして申し訳ありません」
「いや、早めに来てシーグローヴ侯爵と話していたんだ」

 セアラも黙って頭を下げる。
 王に謁見するときは通常謁見室だ。応接室で会うところを見るとまだ正式な謁見ではなく話し合いの為に呼ばれたということなのだろう。

「まずは、セアラ嬢が聖獣の加護を得たというのが本当かどうかだな」
『そうだな。そこにいるんだろう、ネル』

 鷹のフランクリンが呼び掛けると、ネルがぴょこりと袖口から顔を出す。

『おひさしぶり、フランクリン』
「……おお!」

 王は目を見開いて小さな聖獣を見つめる。
 その際に勢いでセアラの手を触りそうになったが、エリオットがすかさず彼女の手を引き、王の手が空を滑る。
 笑ってはいけないが、おもしろくなってしまって、セアラは必死でこらえる。

『王様、はじめまして。私はネル。モグラの聖獣で、国中を旅しているの』
「これはまた、小さな聖獣殿だな。私はルパードだ」
『知っているわ。昔、フランクリンが自慢していたもの』
「そうなのか? フランクリン」

 鷹の聖獣は、気恥ずかしいのかそっぽを向いた。そんなやり取りだけでも、王と聖獣の仲の良さがうかがい知れる。
 王族は十三歳の儀式の際に、聖獣から選ばれる。気に入ったところがあるから加護を与えるのだろうから、聖獣とその主の相性はいいのだろう。

『王様は真面目で責任感が強いもんね』

 ネルがにこにことほほ笑みかけると、王の目尻も下がっていく。あまりに微笑ましい光景で、セアラまで和んでしまった。

『ネル。お前、なんで王族以外に加護を?』

 問うのはフランクリンだ。

『それはその……、ホワイティねえさんが気に入っているならさっさと加護を与えなさいって言って……。やっぱり駄目だった? ごめんねぇ』

 じりじりと袖口に隠れようとするネルをかばうように、エリオットが一歩前に出る。
< 129 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop