引きこもり令嬢の契約婚約
「僕はセアラと結婚する。彼女が王太子妃になるのならば、問題ないだろう?」
「しかし、エリオット。お前昨日は婚約破棄をしたと……」
これに懸念を示したのは王だ。しかしエリオットは、首を振って否定する。
「先ほど気持ちを確認して、セアラの覚悟も確かめました。……確かに僕たちは、ひとりひとりは頼りなく、次期王というには不安があるかもしれません。ですが、セアラが弱気の時は僕が、僕が弱気の時はセアラが支え合えば、きっと乗り越えていけると思っています」
手を握りあうエリオットとセアラを見て、王は小さく嘆息した。
「……愛は、いつまでも続くと思うか?」
「続かないのですか?」
「私はそうだったな。国の防衛に手いっぱいで、気が付いたらお前の母親は心を病んでいた。私が支えねばならなかったのだろうが、彼女の望むようには傍にいてやれない。彼女の癇癪に怒りすら覚えることがあった。時が経つのに従って、愛は確実に目減りしていったように思う」
エリオットは母のことを知らない。生まれて一年もしないうちに離縁したと聞いているし、抱かれた記憶も特にない。顔は肖像画で見たことがある程度だ。心の病が悪化して死んだことは聞いたが、だからといって感情が揺れ動いたことはあまりない。
「愛は、一方通行では育たないのだと思います」
「……私のせいだと言いたいのか?」
「違います。どちらかのせいではないし、どちらのせいだともいえます。歩み寄る努力は、双方がしなければ意味がない」
「……やれやれ、耳が痛いな」
王は大きくため息をつくと、セアラの方を向いた。