引きこもり令嬢の契約婚約
「お味がお気に召さなかったのかしら。……エリオット様、こちらの茶葉は隣国オズボーン王国から輸入したものですのよ。エリオット様のお姉さま、フィオナ様の嫁ぎ先ではありませんか。おかしなものがあるわけがありませんわ」
「オズボーン王国は大国だ。義兄上や姉上がすべてを把握できるわけではないだろう。おかしいというのは、効能のことだ。僕はね、昨日このお茶を飲んだ後から、思考に靄がかったようになり、君たちの言葉をうのみにしてしまった」
「うのみだなどと……! 殿下は私の案に賛同してくださったのではないのですか」
責めるような口調にも動じず、エリオットはキャンベル公爵を見据えた。
「そうだね。ごく自然に、君の案が素晴らしいものだと思ったんだ。だけど、その後、ホワイティが作り出す浄化の風を浴びたことで、そのおかしさに気づいた。多分、気づけるのは聖獣の加護がある僕だけだよ」
青ざめたアドレイドに、エリオットはゆっくりと微笑みかけた。
「別に君たちを疑っているわけじゃない。きっと君たちは、何も知らずにその茶葉を注文し、味が気に入って飲んでいるだけなんだろう。ただ、断言するよ。僕は聖獣の加護持ちとして、そのお茶には危険性を感じるんだ。だから、調べさせてほしい」
「そ、そうですな。私が飲んだ時は特に何も感じませんでしたが。……誰か。茶葉を持ってきてくれ」
逃げ場を与えるエリオットの発言に、キャンベル公爵はすぐに食いついてくる。
「茶葉の入手ルートについても、説明を頼むよ。君たちになんの嫌疑もかからないことを祈っているよ」
アドレイドの手が小さく震えている。
ここまで脅しておけば、自身の主張をしてくることはないだろう。
「それと、セアラの正妃教育が再開するけれど、前のようにその場に乗り込んでいくのは禁止だ。セアラは今、国の保護対象に入っている」
「なぜ……」
「聖獣の加護を賜ったからさ」
キャンベル公爵の顔から一気に血の気が引く。