引きこもり令嬢の契約婚約
「な、なぜ! 王家の血筋でもない者が、いったい誰の加護を得たと」
「そうよ! あのような何の力もないお方が」
言い返してきたふたりは、エリオットの顔を見るとすっと黙った。
いつも温和な王太子の目が、笑っていないことに気づいたのだ。
「僕の婚約者を愚弄することは、僕を侮辱しているのと一緒だ。わかるね?」
「……はい」
「彼女に加護を与えたのは、モグラの聖獣ネルだ。彼女によく似た、穏やかで優しい聖獣だよ。きっと気が合ったんだろう。では」
エリオットは、茶葉を受け取ると立ち上がり、部屋を出ていく。
*
残されたキャンベル公爵とアドレイドは、軽く体を震わせていた。
「そんな……! なぜあんな小娘に、聖獣が……!」
キャンベル公爵の表情から余裕が消えた。その顔に浮かんでいるのは嫉妬だ。
彼が焦がれ続けた聖獣が、王族ではない娘に与えられたのだ。傍流とはいえ、王家の血を引いている自分の方が、資格があるはずなのに。
「なぜ、私には……なかったのに」
「お父様! どうしてこんなことになったんですか! 私が王太子妃になるのだと、ずっと言っていたじゃありませんか!」
「うるさい! お前がエリオット殿下に気に入られないからこんなことに!」
強く叱責されて、アドレイドは泣きそうだ。
しかし公爵の心中はそれどころではない。
王族でもない人間に聖獣の加護が与えられた。そのことが、彼の心に嵐を呼んだ。
「おのれ……小娘が」
固く握られた拳には、羨望から変質した怒りがこもっていた。
「そうよ! あのような何の力もないお方が」
言い返してきたふたりは、エリオットの顔を見るとすっと黙った。
いつも温和な王太子の目が、笑っていないことに気づいたのだ。
「僕の婚約者を愚弄することは、僕を侮辱しているのと一緒だ。わかるね?」
「……はい」
「彼女に加護を与えたのは、モグラの聖獣ネルだ。彼女によく似た、穏やかで優しい聖獣だよ。きっと気が合ったんだろう。では」
エリオットは、茶葉を受け取ると立ち上がり、部屋を出ていく。
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残されたキャンベル公爵とアドレイドは、軽く体を震わせていた。
「そんな……! なぜあんな小娘に、聖獣が……!」
キャンベル公爵の表情から余裕が消えた。その顔に浮かんでいるのは嫉妬だ。
彼が焦がれ続けた聖獣が、王族ではない娘に与えられたのだ。傍流とはいえ、王家の血を引いている自分の方が、資格があるはずなのに。
「なぜ、私には……なかったのに」
「お父様! どうしてこんなことになったんですか! 私が王太子妃になるのだと、ずっと言っていたじゃありませんか!」
「うるさい! お前がエリオット殿下に気に入られないからこんなことに!」
強く叱責されて、アドレイドは泣きそうだ。
しかし公爵の心中はそれどころではない。
王族でもない人間に聖獣の加護が与えられた。そのことが、彼の心に嵐を呼んだ。
「おのれ……小娘が」
固く握られた拳には、羨望から変質した怒りがこもっていた。