引きこもり令嬢の契約婚約
「セアラ!」

 名前を呼ばれ、振り向くとエリオットがやってくる。

「待たせたね」
「公爵様とのお話は終わったんですか?」
「ああ。今のところは協力的に動いてくれそうだ。もらった茶葉はホワイティに分析してもらっている。この後、文官たちにはあの茶葉の入手ルートの調査をしてもらって、おかしな事象があれば、公爵家への調査に入ることとなるだろう」

 話している途中で、エリオットがセアラの帽子を触る。

「葉っぱがついている」
「あら? 本当だわ。ありがとうございます」

 くい、と帽子のつばを上に向けられ、エリオットと目が合う。妙に甘い視線に、セアラはドキドキしてしまう。

「君が聖獣の加護持ちであることを、キャンベル公爵に伝えたんだ。どうせ、じきに発表される話だし」
「そうですか」
「だからしばらくは身辺に気を付けてね。ネル、セアラを守ってくれるかい?」
『うん。いいよ』

 肩のあたりからネルの声がする。

「ふふ。頼もしいわね」

 セアラが笑うと、エリオットの顔が近づいてくる。一瞬だけ唇が触れ、すぐに離れていった。
 気持ちを伝え合ったからか、エリオットの態度が甘すぎて困る。

「エリオット様……人目があります」
「見せつけてるからいいんだよ」
「よくありません!」
「ちぇ……早くセアラを王城で迎え入れられるようにしなきゃ」
『エリオット。あんまり急ぐとホワイティねえさんがまた怒るよ』

 ネルに諭され、ようやく離れてくれる。

「残念。明日から正妃教育も再開だ。終わったら待っていてよ。顔が見たいから」
「……はい」
「殿下! そろそろお時間ですよ」

 エリオットの側近が呼びに来て、強制的に連れていかれる。
 セアラはふふ、と笑うと「じゃあ私たちは帰りましょうか」と馬車の方へと急いだ。

< 139 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop