引きこもり令嬢の契約婚約
「高位の令嬢にだって、苦労はあるわよね」

 たまたま、自分の親が子供に期待を寄せないタイプだっただけで、アドレイドやソフィアのように親の意向を押し付けられて苦しむことは、普通に起こりうることなのだ。

「こんなこと、終わりにできないのかしら」

 今の世の中は、女性の意思があまりにも軽視される。
 家長によってまるで駒の扱われることに、どうしても違和感がぬぐえないのだ。

『おかしいと思うのなら変えるべきなんじゃない?』
「そうよね」
『意思が積み上がって、変革は起こるんだよ。そして変革には指導者が必要になるの。……セアラがやればいいんじゃない?』

 セアラは一瞬思考が止まった。そんな大それたことは、ソフィアのような強い意思の持ち主がやることだと思っていたから。

「でもネルちゃん。私にはそんなこと」
『できるよ。セアラには知識があって、立場もあって、私の加護もある。むしろどうしてできないって思うの?』

 ここのところ、セアラはこんな問いかけにばかり出あう。
 自信を持てと、繰り返し言われているかのように。

『それが力を持つ者の使命なんだよ』

 重みを感じるその言葉は、深く心に染み入ってくる。

 最初の王様は、ただの平民だった。彼には平和な国を作りたいという意志があって、同じ意思を持つ人が集まって、彼に賛同した聖獣が力を貸した。

 それ以降は血筋によって王が決められていたかもしれないが、王となる者は決して傲慢ではなかったはずだ。
 むしろ、自分のことは犠牲にしても、民に平穏を与えるために矢面に立ってきたはずだ。

 現王もきっとそう。ブライト王国が落ち着いたのはフィオナ王女がオズボーン王国へ輿入れしてからだ。
 それまでは、隣国から度重なる侵略目的の攻撃が行われていて、防衛のために気が休まることも無かったはずだ。
 ルパード王はおそらく、自分の家族をゆっくり顧みる時間もなかったのだ。

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