引きこもり令嬢の契約婚約
 やがて、エリオットもその立場に立つ。
 彼の妻になるということは、民の為に働く覚悟を持たねばならないということだ。

「ずっと、大それたことはできないと思っていたけれど、彼の隣に立つのならば、前に立つ勇気が必要なのね」
『うん。私も助ける。それに……セアラを助けようって思っている人、他にもいっぱいいるよ』

 ネルの言葉に、ソフィアの顔が浮かんでくる。マイルズも、父も、もちろんエリオットも、セアラの頼みをないがしろにはしないだろう。

(ああ、そうか)

 聖獣は、王族だから力を貸してくれるのではないのだ。自分たちの暮らす美しい国を、守ろうとするのが王族だから。だから加護を与えてくれるのだ。

「う……」

 小さなうめき声と共に、アドレイドが目を開ける。

「アドレイド様、大丈夫ですか?」
「セアラ様……あら? 私……」

 彼女はきょろきょろと周囲を見回す。

「お倒れになったんです。起き上がれますか?」

 腕を支えて起き上がらせると、アドレイドは瞬きをしながら、セアラをまじまじと見て、わずかに腫れた頬に触れた。

「変な人ね。あなたをぶった私を心配するなんて」
「アドレイド様のお気持ちも分かりますから」

 セアラが苦笑すると、アドレイドはバツが悪そうに唇を噛み、そして力の抜けたような笑みを見せた。

「……ごめんなさい。私、悔しくて……言い過ぎたわ」

 アドレイドからは毒気が完全に抜けていた。セアラの言葉を聞き、申し訳なさそうに目を伏せる。

「いいえ。私も言い過ぎましたから」
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