引きこもり令嬢の契約婚約
「……さっきの、王太子妃という立場が、私を幸せにしないって、……どうして思ったの?」

 おずおずと問いかけるアドレイドの手を握り、セアラは、誤解されないようにゆっくりと話す。

「アドレイド様が、一番を欲しているように見えたんです」

 父であるキャンベル公爵の愛情と、エリオットからの愛。そして、国一番の女性という立場。

「王族は、国の為に尽くさねばなりません。王は有事が起きれば、家庭を顧みる暇はなくなるでしょう。陛下はそうしているうちに奥様とは心が離れてしまったと、私に教えてくれました。愛を求める人が王妃になるのは、そういう意味で向かないと思ったのです」

 アドレイドが顔を赤くし、バツが悪そうに目をそらす。
 きっと彼女が最も欲しいのは、父の愛情なのだろう。それは王太子妃にならなければ叶えられないと思っているから、混乱し、侯爵家に乗り込んでくるような常識外れた行動に行きついてしまったのだ。

「いつかアドレイド様は、あなたに孤独を感じさせないような愛情深い方と出会えます。きっと」
「なによ。……じゃああなたはどうなの。一番に愛されたいって思わないの?」

 逆に問いかけられ、セアラは考えを巡らせる。だけど、そもそも自分が一番になることなど、考えてもみなかったのだ。

「……私は引きこもりですし、どちらかと言うと我が家のお荷物ですから。そんな私が今、エリオット様に婚約者にと望まれるだけで光栄なことで、ダメになったら受け入れるほかありませんしね」
「はあ」
「でも望まれたからには頑張りたいし、その立場に見合う働きができるよう努めたいと思っています」

 セアラが本心を告げると、アドレイドは呆れた様子だ。
< 146 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop