引きこもり令嬢の契約婚約
「……あなたって、だいぶ図太いわよね」
「そうかもしれません」
『図太いは私も同感かも』

 ネルにまでそう言われてしまっては、セアラも苦笑いするしかなかった。

「ところで……アドレイド様。ひとつ、お聞きしたいことがあるんです。あのお茶……輸入されたと聞きましたが、どの商会を通じて?」
「さあ。お父様と昔からつながりのある商会みたい。頭がすっきりするからと、私は家庭教師との授業の前によく飲んでいたの」
「常飲されておられるのね? 体におかしなところは?」
「別にないわ。どちらかと言えばすこぶる元気よ。でも……なんだか今は、別の意味ですっきりしてきたわ」

 アドレイドは瞬きを繰り返し、セアラを、そしてネルを見る。

「もう何を言っても、セアラ様はエリオット様を譲る気はなさそうだし、こだわっていても仕方ないって……そんな気がしてきたの。お父様は不満だろうけど、私のせいでもないわよね。そう思わない?」
「ええ。……すこし休んでいってください、アドレイド様」
「ありがとう」

 それからしばらく、セアラはアドレイドと話をした。
 いつの間にか、王太子妃にならなければ自分には価値がないと思うようになっていた、とぽそりとつぶやき、家に帰るのが怖い、とも言った。

「なにかあれば、力になります」とセアラが言うと、困ったように笑う。

「私、あなたに嫌なことたくさん言ったわ。それでもそう思うなら、困ったお人よしね」
「そうでしょうか」
「普通ならざまあみろっていうところよ」

 そう笑って、アドレイドは帰っていく。

「さっぱりしていて、いい方ね」
『ふつうは自分にいじわるした人にそんなこと言わないんだよ』

 ネルは呆れた口調だ。腕から肩に駆け上がり、セアラの頬をぺちぺちと叩く。

『まあ、だからエリオットが気に入ったのかな』

 セアラはネルの頭を指先で撫でた。

「ネルちゃん、アドレイド様を浄化してくれてありがとう」

 素直にお礼を言うセアラに、ネルは微笑み、そして髪の毛に隠れるようにうずくまる。

『どういたしまして』

 アドレイドと話したことで、セアラも少しすっきりしたような気がした。

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